高水準かつ持続安定性の高さを求め「NBCSS」を導入
適切なリソース配置が実現し、開発スピードも向上
高齢化の進展により、介護サービスの需要が増加している日本。しかし、担い手である介護職員の人手不足は深刻だ。厚生労働省は、2025年度に約32万人、2040年度には約69万人を追加で確保する必要があると試算している。それだけの人材を確保できる保証はどこにもないため、早急に業務効率化と生産性向上を図り、人手不足をカバーすることが求められる。
※厚生労働省プレスリリース「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」より(2021年7月9日) https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000207323_00005.html
この状況に早くから危機感を抱き、2018年に人工知能(AI)を用いて自立支援型ケアマネジメントを支援する「AIケアプラン」を日本で初めて開発・商用化したのがシーディーアイだ。執行役員 CTO(最高技術責任者)の鳥居淳氏は、サービスの特長について次のように話す。
「2020年5月にAIを大幅に刷新し、第二世代目のAIケアプランを上市しました。現在、フランス語で配慮や気遣い、ケアなどを意味する『SOIN(そわん)』として展開しています。簡単な基本情報を入力するだけで、被介護者様がどのようなケアプランを利用すると状態改善につながるのかご提案するとともに、1年後の状態の予測もできます。」(鳥居氏)
膨大な介護データをAIに学習させているため、同じような状態だとどんなサービスが最適なのか示せるというわけだ。従来、介護ではケアマネジャーの技量・経験・知識の差によってどうしてもケアプランのクオリティにばらつきが出ることが課題となっていた。その点、「SOIN」を導入することで、ケアマネジャーのキャリアにかかわらず、常に一定以上の水準を保てるようになった。
ただでさえ多忙なうえ、人手不足のため過重労働が問題となっているケアマネジャーの負担軽減にもつながる。まさに、政府が推進する“科学的介護”を牽引する存在なのだ。
一方でシーディーアイでは、最先端で開発を進めているため浮き彫りになった課題もある。とりわけ、情報システム関連の業務がそうだ。
「もちろん匿名化されていますが、介護サービスのご利用者情報というセンシティブなデータをお預かりしてAIの学習をしていますので、セキュリティ管理は厳密に行うことが求められます。情報システム業務には一定の工数を割かなくてはなりませんでした。」(鳥居氏)
シーディーアイは、介護事業者が中心となって2017年に立ち上げられたベンチャー企業だ。社員数は20名足らずと少数精鋭の体制で、前例のないAIサービスの開発を加速させている。つまり、最先端のAIエンジニアが集まっているわけだが、本来取り組むべき開発業務に集中できない状況となってしまっていたのだ。
「以前は情シス専任者が在籍していましたが、退職してしまったのです。取り扱うデータの重要性を考えると、頻繁に専任者が入れ替わる状況はあまり望ましいものではありません。派遣社員を雇用していたときもありましたが、同じ人が長期間来てくれるとは限らず、入れ替わりのたびに教育をし直す必要があります。コストもかなり嵩みますので、結果的に1人のAIエンジニアが情シス業務を兼務することになったのです。」(鳥居氏)
そのエンジニアは優秀であるがゆえに、情報システム業務も難なくこなすことができた。しかし、人がこなすことのできるタスク量には、当然限界がある。しかも、情報システム業務は突発的に発生することが多い。並行してAI開発を進めようとしても、なかなか想定していた通りにはいかず、結果的として情報システム業務にかかりきりの状態になってしまっていた。
「おかげさまで『SOIN』は全国の介護事業者様やケアマネジャー様から高い評価をいただいていますが、今後さらに進化させていかなければなりません。そのためには開発を加速させる必要がありますので、優秀なエンジニアが本来の力を発揮できない状況は、非常にもったいないと考え、情報システム関連業務をアウトソーシングしようと考えたのです。」(鳥居氏)
鳥居氏は、付き合いのあった情報システムに強い大手企業に声をかけたほか、インターネット検索で探した複数の企業にもアプローチした。最終的には3社に絞り込んだというが、何を選定基準としていたのだろうか。
「大きく2つです。1つは、弊社のセキュリティルールに対応していただけるかどうか。国際的な情報セキュリティ規格であるISO27001/ISMSの認証を取得し、かなり細かいルールを設定していますので、ここは重要なポイントでした。もう1つは、それをクリアしたうえでコストが見合うかどうかを見極めました。」(鳥居氏)
この2つの基準をクリアしたのが、ネットブレインズのITアウトソーシングサービス「NBCSS」だった。
「他の2社は、ISMSに対応することが難しかったり、ITアウトソーシングの実績が乏しかったり、その割に料金が高かったりしました。その点、ネットブレインズはセキュリティルールへの対応を含めた柔軟性の高さとコストの妥当性を併せ持ち、豊富な実績もあるという安心感がありましたので、導入を決めました。」(鳥居氏)
「NBCSS」を導入したのは、ちょうどPCを買い替えるタイミングでもあった。PCのキッティングを効率的に進める必要があったため、ネットブレインズでは、いったんPCを受け取って指定されたキッティングを行い、シーディーアイに届ける独自フローも構築。ソフトウェアインストール時のルート権限付与やアカウント、メーリングリストのメンテナンスなども実施している。導入の成果はどうだったのだろうか。
「最大の目的は、情シス業務を兼務していたAIエンジニアの工数を開発業務にアサインし直すことでしたが、それを達成できたのは非常に大きいですね。業務負荷も減り、本来の業務に集中できて生き生きとしている姿を見ると、『NBCSS』を導入してよかったと思います。」(鳥居氏)
CTOとして開発のみならず情報システム業務までマネジメントしている鳥居氏にとっても、負担を大きく減らすことができたようだ。
「たとえば以前は、社員が業務上必要なソフトウェアをインストールしたいときでも、その都度ルート権限を付与する必要がありました。そういった業務が突発的に起こるのが情シス関連の特徴で、本来の業務への集中がどうしても削がれてしまうところがあります。しかし今は、そうした実質業務をネットブレインズへ自動的に振り分けられるようになり、私は判断だけすれば良いフローに変えることができましたので、心理的にもタスク量的にもかなり楽になりました。」(鳥居氏)
日本の介護は、世界的にも水準が高いことで知られ、これまで積み上げてきたサービスの実績も非常に多い。その膨大なデータを適切に扱い、革新的なAIサービスを生み出しているシーディーアイだけに、セキュリティルールの厳しさや情報システム業務で求める質の水準の高さは相当のものだ。そのため、現時点で「NBCSS」に100%満足をしているわけではないが、最適な情報システム環境をともに構築するパートナーとしての期待は高い。
「現在、依頼時にどのくらいでタスク完了を見込めるかが可視化できる仕組みの構築もお願いしています。こうした取り組みも踏まえ、今後はさらなる業務効率化に取り組んでいけたらありがたいと考えています。」(鳥居氏)